過食症を抱える人にとって、誰の視線も気にならない一人暮らしは良くも悪くも自由が利く環境です。
「食べているところを見られたくない」という点では、一人暮らしは過食症にとってメリットがあるのかもしれません。
しかし一方で、自由が効くからこそ自制が効かなかったり、寂しい気持ちをを埋めるためにどんどん食べ物に手が伸ばしてしまうこともあります。
ストレスのはけ口が食べることになってしまう癖を止めるためには、誰かと暮らすべきなのか…?
今回の記事では、今日現在も過食症に悩まされながら一人暮らしを続けている私が、当事者の目線から一人暮らしと過食の関係性について考えてみました。
なお、この記事で紹介するのはあくまでいち経験者としての考察内容です。「こういう意見もある」という捉え方をしていただけると幸いです。
過食症で一人暮らしをするメリット
過食症を治すという観点からみると、一人暮らしの特に大きなメリットは以下の4つ。
それぞれ詳しく説明します。
食事を人に見られなくて済む
「食べている姿を見られたくない」という想いが強い人は、一人暮らしの方がよりストレスレスに暮らせます。
- 人と食事をすると緊張してうまく食べられなくなる
- 自分が何をどれくらい食べているのか見られるのがとにかく嫌でたまらない
- 他人の食事量が気になる
こういった特徴に当てはまる人は、誰かと同居していると食事の度にストレスが溜まってしまいます。
小さなストレスの積み重ねから、過食のスイッチが入ってしまうケースもあります。
また、一人暮らしなら当日の自分の食事量、内容、タイミングも自由に決められるし、誰かに知られることもありません。
自分のペースで過食できる
私が2年以上通い続けている心療内科の先生は以前こう仰っていました。
残念ながら、過食は過食をしないと治らないんです。
体からのサインですから、意志の力でどうにかしようというのは不可能に近いんですよ。
大切なのは過食した自分を責めないこと。これに尽きます。
繰り返す過食を辞めるためには、体重の一時的な増加を覚悟したうえで食べるしかないと語っていました。
私自身「もうどうでもいいや」と投げなりになって過食し尽くした結果、「あれも食べたい、これも食べたい」とイライラする時間が減りました。
誰かと住んでいると、過食をするにも場所や時間を考えなくてはいけなくなり余計なストレスがかかってしまいます。
当事者でない人に「これは必要な過食だ」ということを理解してもらうのも難しいです。
過食を本気で辞めたいからこそ一人暮らしを続けるという選択肢も有効だと思います。
傷つくことを言われない
摂食障害における大きな悩みの一つが、体型への執着心を理解してもらえないことです。
家族や友達が善意で口にした言葉が当事者にはグサッと刺さることがあります。
例えば「前よりも食べられるようになったね」とか「たくさん食べてえらいね」「ちょっと太ってるくらいがちょうど良いよ」といった言葉。
言った本人は褒めたり慰めたりするつもりで悪意ゼロなんですが、摂食障害に悩んでいる人間からすれば「食べ過ぎ」と言われているような感覚になります。
もちろん、過食に悩んでいる時の「ちょっと太ったね」とか「食べ過ぎでしょ」なんてのも絶対にNG。
こういう何気ない一言で傷つくリスクを大幅に減らせるのも、一人暮らしの大きなメリットの一つです。
自分の体調の変化に気づきやすい
摂食障害と長く向き合っていると、自分のストレス具合や調子の良し悪しが分かるようになってきます。
「なんだか今日はイライラするな」
「睡眠不足だから食欲が乱れるかも」
「昨日食べ過ぎちゃったから、お腹がスッキリしないな」
そんな、自分にしか分からないちょっとした変化をキャッチできるようになります。
家族や恋人に調子を合わせたり、周囲に気を遣う機会が多いと、自分のことを思いやる時間もなかなか取れません。
自分だけのひとり時間を好きなだけ確保できる一人暮らしならではの良さではないでしょうか。
過食症で一人暮らしをするデメリット
続いて、過食症で一人暮らしを続けることのデメリットを解説します。
私自身も感じている、大きなポイントは以下の2つです。
メリットと矛盾する点もありますが、そこは一長一短。
ご自身の性格を踏まえながら検討してみてください。
誰も止めてくれない、自制が効かない
メリットで「自分のペースで過食できる」と挙げましたが、それは「過食を止めてくれる人がいない」とも言い換えられます。
先ほどもお伝えした通り、過食症の方の多くは食べている姿を見られるのが苦手なため、同じ空間に誰かが居るだけで過食のストッパーになってくれることもあります。
- 出かけていた家族が帰宅する
- 同居人が部屋に入って来る
- 買い出しに行こうとするのを止められる
一人暮らしでは、こんなシチュエーションはありません。
人目を気にしなくて済む反面、自分の力で食べるのを止めなければいけないのは中々大変です。
寂しさが過食を招くこともある
これもまた性格によりますが、「寂しい」という気持ちがストレスとなって過食を引き起こすケースもあります。
辛いことがあった日、誰かに話を聞いてもらいたい日、一人で居たくない日も、自分で自分の機嫌を取らないといけないのが一人暮らしです。
もちろん親しい誰かに電話を掛けるという手段もありますが、同じ空間で直接おしゃべりをする時間は何にも代えがたい安心感があります。
一人で居るのが苦手な方や、過食の原因を一つでも多く減らしたい方はこの点も考慮してみてください。
結論:見られたくないなら一人暮らしがベター
メリット・デメリットを踏まえたうえで「過食症と一人暮らしの相性」について改めて考えてみたのですが…
個人的には「一人暮らしだったからこそ少しずつ回復している」と思っています。
というのも、私自身の性格の特徴を挙げてみると…
という感じで、誰かと同居するのが向いていないんですよね。
またメリットの部分でもお話ししましたが、一人暮らしなら人目を気にせずとことん過食できるという側面があって、個人的にはこれがとても有効でした。
「どうせ止められないから、限界まで食べてしまおう」
「深夜でも早朝でも、食べたくなった時に買い出しに行けばいい」
良い意味で振り切ってしまえることで自分への制御が無くなって、ストレスがかからなくなった気がします。
誰かと暮らしていたらこうはいかなかったでしょう。
このように自分の性格や過食の特徴を考えてみることで、過食で思い悩む日々に新しい活路を見出せるかもしれません。
一人暮らし中に摂食障害を発症した場合
一人暮らしの最中に摂食障害の症状が現れ始めたら、たいていの場合は「一人暮らしを続けるのか」「実家へ戻るのか」の2択に迫られると思います。
ご家族には「戻っておいで」と言われるかもしれませんが、ここまでお話した通り、周囲に協力を仰ぐことが必ずしも良い方向に働くとは限りません。
どうするべきか迷った際には、以下の3つのポイントを考えてみてください。
- 金銭面
仕事やバイトを続けられそうか。過食や通院の費用を含めて、生活費は確保できるのか。
- 医療機関の利便性
心療内科の病院やクリニック、摂食障害について相談できる機関が継続的に通える距離にあるか。
- 気持ち
自分は誰かと同居するのが向いているのか。過食症を本気で治したいかどうかなど
まとめ
一人で過ごす時間が長いぶん、一人暮らしなら自分の体調や心の変化を敏感に感じ取れます。
過食は治まったと思ってもぶり返すことばかりなので、そのサインを見逃さないためには、一人暮らしは最適かもしれません。
しかし一方で、常に他人の目があるというストレスが過食の悪化を招くおそれもあります。
一人暮らしか実家(同棲)かで迷った際には、金銭面や病院へのアクセスだけでなく
「そもそも自分は過食を本気で治したいのか。そのためにはどんな環境を用意すれば良いのか」を考えてみてください。
そして最終的にどのような選択をしても、きちんと決断をした自分を褒めてあげてくださいね。
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