家族、友達、恋人…身近な人が拒食症や過食症になったとき。
- 一緒に食事に誘ってもいいの?
- 無理やりでも食べさせたほうがいい?
- 何をしたら助けになれる?
などなど、周囲はどう接したら良いのか戸惑うこともあると思います。

実際に私が過食症になったとき、良かれと思ってやってくれたことが、かえって悪化の原因になることもありました。
そこで摂食障害との接し方について、過食症経験者が実際にされて嬉しかったこと・嫌だったことをもとに解説します。
なお、今回は医学的な視点よりも「当事者にとってどうだったか」を重視してお話ししますので、個人差が生じやすい内容であることはご了承くださいませ。
ぜったいに避けてほしいのは「食事の操作」

過食症でも拒食症でも、基本的に摂食障害の人は自分が食べている姿を見られるのが苦手です。
自分と相手の食事量を比較して、自己否定に陥る要因にもなります。
そして何より、食事内容を自分で決められないことへのストレスが半端じゃありません。
よって、以下のような「食事内容を操作する行為」はできる限り避けてください。
- 食事メニューを勝手に決める
- 「もっと食べたほうがいい」「食べすぎだよ」と介入する
- 「ご飯行こうよ!」「おいしいもの食べに行こうよ」と外食に連れて行く
それぞれ、理由と合わせて詳しく解説します。
NG①:食事内容を勝手に決める
摂食障害の特徴の1つとして食事に関するマイルールがいくつもあって、それを守れないと調子が狂うということがあります。

基本的には日々の食事内容に介入せず、本人の意志に任せておいてほしいのです。
「食べすぎ!」とお菓子を取り上げたり、「もっと食べなよ」と多めにご飯を盛り付けたりすることは絶対にやめてください。
また実家暮らしの場合は、日々の食事をどうしていきたいのか、本人としっかり話し合いましょう。
- 同じタイミングで食べるか、一人で食べたいか
- 同じものを食べるのか、各自で用意するのか
- 食べたくないもの、食べたいものはあるか
- メニューを固定にするかどうか
本人のルールを聞いて、協力できること・そっとしておくことをすり合わせてください。
恋人と同棲している人なら、料理担当として食事内容を一任してしまうのもアリです。
NG②:外食に連れて行く
友達や恋人がやってしまいがちなのが「何か美味しいもの食べて元気出そうよ!」と外食に連れて行くことです。
厳しいことを言いますが外食や気分転換で回復するほど摂食障害は甘くありません。
むしろ「ありがたい気遣いだから無下にできない」と無理をしてかえって調子を崩してしまうことがほとんどです。

もちろん、本人から「克服したいから一緒に食事してほしい」と言われたのなら、ぜひとも行ってあげてください。
しかし特に何も頼まれていないのなら助けようとせず、そっと見守ってあげましょう。
摂食障害の人へ接するとき避けてほしいこと
「食事の操作や介入」以外にも、摂食障害の人と接するときに気を付けて欲しいことがあります。
「ダイエット系の話題」と「安易な同情」です。
それぞれ詳しく解説します。
体型やダイエット系の話題
- 「最近太ったor痩せた」「体重が何kgになった」
- 「○○ダイエットが流行っているらしい」
- 「女優の△△さんが細すぎて憧れる」
- 「ダイエットを始めた」「お菓子は食べないようにしてる」
こういう体型や見た目、ダイエットに関する話題は摂食障害の人にとって非常にデリケートです。
特に「太る」「痩せる」といったワードには敏感になります。
「まだまだ痩せたい…」「やっぱり見た目がすべてなんだ」と摂食障害のスイッチが入ってしまうので、こういう話題は出さないのが無難。

「触れない」「言及しない」のが当事者にとって最もありがたい対応です。
「わかるよ」と同情・共感する
私が過食症になり、周囲との連絡を絶ったとき、心配して話を聞いてくれる人が何人かいました。
みんな「わかるわかる、ダイエットするとしんどいよね!」と共感してくれましたが、正直全然嬉しくありませんでした。

むしろ「あなたに何が分かるの?」「ダイエットと摂食障害を一緒にしないで」と苛立ちを覚えたほどです。
軽率な共感はときに人を傷つけます。
寄り添いたい気持ちはとても素敵ですが、近づきすぎず、話に耳を傾けてくれるだけで十分です。
友達、家族、恋人にできること

食事の操作はしない、共感もやめてほしい…じゃあどうすればいいのか?
いち当事者としてお願いしたいのは「干渉せず、ただ味方でいてほしい」ということです。
干渉しない
先ほどもお伝えしたように、本人にとっていちばん嫌なのは「周囲から介入されること」。
太ったり痩せたり、食べ物を詰め込んだり、吐き出したり…そんな目まぐるしく変わる自分の感情に、誰よりも困っているのは自分なんです。

「なぜこんなことをしてしまうのか」と自分が分からなくなっているときに
周囲から「これをしてみたら?」と言われても、それどころじゃないんです。
本人が自分の病気を受け入れられるまで、自分の感情と向き合えるようになるまで、干渉せずに辛抱強く見守ってあげてください。
「味方」でいる、ただ寄り添う
助けようとするのではなく、ただ隣に寄り添っているだけの距離を保つこと。
- 痩せる前、太る前と態度を変えない
- 「困ったときはいつでも話聞くよ」とやんわり伝えておく
- いつも会う時間に、いつも通り会う
「体型がどうなろうと私とあなたの関係は変わらないよ」と行動で示し続けてくれること。
それが摂食障害と向き合うなかで、いちばんの助けになります。

摂食障害との戦いは数カ月程度で済むものではありません。
何年、何十年と時間を要することもあります。
一時的なものと思わず、「あの子の新しい個性なのだ」と思って接してあげてください。
まとめ:「命にかかわる」と感じたら病院へ
以上、摂食障害と周囲の人間の接し方について、経験談に基づき解説しました。
- 食事の操作、外食に連れて行くのは避けて
- 体型やダイエットの話題は避ける、軽率な同情はしない
- 干渉せず、「体型関係なく味方だよ」と態度で示す

繰り返しになりますが、これはあくまで私個人の体験談に基づくもので、すべての摂食障害患者の共通事項ではありません。
また下剤乱用や意識混濁など、命に関わり得る症状が見られる場合は、直ちに医療機関を受診させてください。
そこは介入というより、必要な処置です。
本人の症状に応じた接し方をするため、この記事が何か少しでもお役に立てれば幸いです。
コメント