「本を読む」という行為は、知的でハードルが高いこと…というイメージがあるかもしれません。
しかし心に寄り添ってくれる本に出会う経験は、何ものにも代えがたい強い味方になってくれます。
今回はメンタルがつらい大学生に向けて、読みやすくておすすめの小説を3つご紹介します。
- 小野寺史宜『ひと』
- 朝井リョウ『もういちど生まれる』
- 住野よる『麦本三歩の好きなもの』
大切なのは「元気を出すこと」ではなく、「いまの気持ちに寄り添ってもらうこと」。
それぞれ口コミも併せてご紹介します。
小野寺史宜『ひと』
最初にご紹介するのは、小野寺史宜さんのベストセラー小説『ひと』(祥伝社文庫)です。
事故で父親を、急死で母親を立て続けに亡くし、大学を辞めざるを得なくなった主人公・聖輔。
20歳という若さで独りぼっちとなり、空腹でどうしようもなくさまよっていたとき、商店街のお総菜屋さんでラスト1個のコロッケを譲ったところから、人との出会いが始まっていく。
誠実な主人公の「ゆずる」という行為がうみだす、『ひと』との縁に注目してほしい。
この物語の魅力は、登場人物はみんな等身大の不器用さがあり、ちぐはぐで、だけど優しい物語であるということ。
陽の光がぽかぽかと当たっているような、穏やかでささやかな人間らしさが見どころです。
読了後にはまさにタイトル通り「人の温もりって素敵だな。優しいひとになりたいな」と思えます。
物語の温かさに魅了された人は多く、2019年には全国の書店員さんが選ぶ『本屋大賞』の2位に輝いています。
続編『まち』も出版されているので、ぜひチェックしてみてください。
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朝井リョウ『もういちど生まれる』
『桐島、部活辞めるってよ』でおなじみ、朝井リョウさんの一冊。
将来への期待と迷い、葛藤を抱きながら毎日を謳歌する「大学生」を取り巻く人々の連続短編集。
男友達からの好意に戸惑う彼氏持ちの汐梨。大学生活をエンジョイしつつも退屈さを感じている翔多。美人な姉を嫌悪する浪人生の梢。才能に溢れた兄をもつダンサー志望の遥…
それぞれが悩み、他人と比べ、誰かを羨みながら、「若者」という時間を生きていく。
朝井リョウさんといえば、若者の葛藤をリアルに表出する文章のタッチが特徴的ですが、本作品でもその魅力が存分に引き出されています。
たとえば、自分の作品に迷いを抱く美大生の心情を表現したこちらの一節。
大学って、そういうところだ。無責任を背負って、自由を装っている。未来どころか、三歩ほど先のことだって、本当は誰にも見えていないんだ。
『もういちど生まれる』p143
「無責任を背負って、自由を装っている」という言葉選びが絶妙すぎますよね。
大学生という生きものの急所を突くような言い回し一つひとつが、言葉にできないモヤモヤを抱えた心に響きます。
ハッピーエンドでもバッドエンドでもなく、淡々と進んでいくストーリーが引き立てるリアリティに注目です。
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住野よる『麦本三歩の好きなもの』
3冊目は住野よるさんの『麦本三歩の好きなもの』(幻冬舎文庫)シリーズです。
住野よるさんといえば『君の膵臓が食べたい』や『青くて痛くて脆い』など、若者向けのビビットな内容が多いイメージかもしれませんが、この小説は「大人こそ魅力が分かるのかも」と思います。
図書館勤務の20代女子、麦本三歩。おっちょこちょいで、仕事では毎日こわい先輩に叱られている。
好きなお菓子はバームロール。暇つぶしに韻を踏む。休みの日はニューバランスを履いて一人でラーメン屋に入る。
そうして「好きなもの」に溢れた毎日を、ちょっとずつ頑張って生きている。
なんでもない日常をマイペースに楽しく彩る、ほっこりのんびり短編集。
感想をひとことで言うなら、「とにかく癒される!」
三歩ちゃん視点の文章にクセがあり、クスっと笑いながら読み進められます。
例を挙げるなら『孤独のグルメ』や『ソロ活女子のススメ』のような、大人が力を抜いてのんびり楽しめる短いドラマを観ている感覚に近いですね。
難しいことは考えず、ほのぼのした話を読んでいるうちに、読んでいるこっちまで肩の力が抜けてきます。
摂食障害がピークに辛い時期に読んだのですが、読了後にはちょっぴり心が軽くなってました。
2023年3月には、続編である『第二集』も文庫本化されています。
このまま人気が続いて、どんどんシリーズ化してほしいです。
口コミ
まとめ
以上、心が疲れた大学生におすすめしたい小説を3冊ご紹介しました。
3冊とも、私自身が救われた本でもあります。
メンタルがつらいときに文章を読むという行為もまた大変だと思いますから、気が向いたときにでも、ぜひチェックしてみてくださいね。
この記事が何か少しでもお役に立てれば嬉しいです。
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